経歴不詳にしてあらゆる才に長けたツァオ・ツォイの神龍コンツェルン総帥就任式は簡素にして厳かに行われた。
対して就任式の後に行われた新本社の記念式典は、各著名人を招いた華やかなものだった。
その式典を終えて、2人はプライベートルームに戻った。
若き総帥はタイを緩めながら、棚にならぶ書類に目を通し整理している。
そんなもの部下にやらせれば良いのにと夏侯惇などは思うが、従兄弟いわく、部下がいなくては資料がどこにあるのかわからないのは困るということらしい。
確かに現在の秘書である夏侯惇は暗殺部隊の隊長も兼ねているので、曹操のそばを離れることもままある。
細々と動いている主に対して、いっそ部下である夏侯惇の方が足を組んでソファで寛いでいた。
深い青色のチャイナドレスのスリットから美しい足が零れ落ちる。
彼女は片手に持ってワイングラスを軽く揺らしながら微笑んだ。


「浮気がしたいのだが」

「すれば良いだろう」


血の繋がった親族であり、秘書であり、学生の頃から肌を合わせる仲である夏侯惇の言葉に、曹操はあっさりと答える。
夏侯惇は微笑みながらも、軽く鼻を鳴らす。


「つれないな。お前は私の初めての男だろう」

「私はお前の忠誠がどれくらいで、どこにあるのかわかっているつもりだが?」

「憎らしいことを言う。たまには可愛らしく嫉妬してくれれば良いのに」

「お前を喜ばす義務はないな」

「本当に憎らしいこと。地獄に落としてやりたくなる」


腰に奇妙な感触を感じたので、曹操が振り返ると間近に迫る夏侯惇の顔があった。
軽く口づけ合う。角度を変えて何度も。

曹操の手から書類が落ちた。

唇を合わせながら夏侯惇は曹操のズボンのベルトを外す。
そうしてまったく兆しを見せていない曹操の性器を外気に晒すと、おもむろに彼女は膝をついた。
曹操の性器に舌をはわせる。
最初はゆっくりと表面をなぞる。そしてひととおり全体をなぞり終えると、次に敏感な先端を刺激する。ちろちろと赤い舌が割れ目をねぶれば、微かに曹操が呻いた。

「フフ……憎らしいが孟徳の感じている時の顔は可愛いな」

上目づかいで夏侯惇が妖しく微笑めば、曹操は自分の股間に夏侯惇の顔を押し付けた。
逆らうことなく夏侯惇は曹操を口に咥えこむ。
亀頭からにじみ出す先走りを吸い上げるように頬をすぼめる。
ビクっと曹操の腰が震える。彼が背にしている棚が揺れた。
幹をしごくように唇で愛撫し、顔を上下に動かす。生温い肉を思う存分頬張る。
手は玉袋を揉みこんで、たまに戯れのように彼の下腹の茂みをさわさわとなでる。
茂みの上からそっと下腹をなぞると、時々曹操の眉根がぎゅっと寄る。
夏侯惇はほくそ笑む。
顔の上下の動きを早める。曹操も腰を使い始めた。くちゅくちゅと濡れた音が響く。
男のえらのはった亀頭が時々夏侯惇の喉の奥を突く。
粘り気のある唾液があとからあとから流れでてくる。
夏侯惇の唇の端から顎を伝って唾液が零れ落ちる。
徐々に自分の下腹が熱くなってきているに夏侯惇は気づいた。
思わず咥えながら熱いため息をつくと、わずかに彼自身に歯をたててしまった。
その刺激にくっと曹操が呻くと、夏侯惇の口内に射精した。
指で唇から零れた精液を拭いぺろりと夏侯惇が舐めとる。


「飢えた雄の顔をしている孟徳も、イッた時の孟徳も可愛い」

「…お前は私に惚れ過ぎだな」


軽く息を整える曹操に夏侯惇は答えなかった。そんなことは今更だったのだ。
夏侯惇が立ち上がると、乱暴な仕草で肩をつかまれた。
位置が入れ替わる。
髪アップにして露になっている項を曹操に舐めあげられる。
彼は背後からしのばせた手はチャイナドレスのホックを外し乳房を解放させる。
手に収まらない豊満な胸をさわさわと愛撫する。
そして片方を夏侯惇の口内の唾液で、もう片方を熱く滴る彼女の片方の下腹の愛液で指を湿せる。
その濡れた指ですでに尖った乳首を触れられて、ぴくんと夏侯惇の肩が震えた。
二本の指が濡れた乳首を挟み、くにくにと強弱をつけて愛撫する。
じんじんと快楽を感じているその乳首にひっかけるように軽く爪を立てられれば、さらに腰の疼きが高まる。
思わずもじつくように太股を擦りあわせていると、その太股と太股の間に男の足が割り込む。
その足に熱くなった秘部を愛撫される。
ドレスにラインが出てしまうからと下着をつけていなかった秘部の肉芽まで、足で擦すられて夏侯惇は喘ぐ。


「あぁっ…はぅ…うん…イイ」


夏侯惇は自ら腰を動かす。
もっと肉芽をしっかり擦って欲しくて、彼女はさらに腰を後ろに突出す。
その淫らな肢体に孟徳はかすかに表情を緩めると、ぐりぐりと膝頭で夏侯惇の熱のこもった割れ目を愛撫した。

「ひあぁぁ…ぁっ…」

割れ目と肉芽を同時に刺激されて、割れ目からとぷりと愛液がこぼれた。
頃合を見計らって曹繰の指がつぷりと彼女の中へ入る。
あっ、と小さく喘いで前に崩れそうになった夏侯惇を曹操が抱き寄せる。
そのまま曹操は夏侯惇の体を体を後ろの自分の体にもたれさせると、愛撫を続けた。
媚肉はとろとろに溶けており、指にざわさわと絡み付いてくるようだった。
片方の手はゆっくりと夏侯惇の体のラインをなぞり、前の開いてチャイナドレスの中でなめらかな脇腹をさすれば忙しなく夏侯惇の息が乱れた。
曹操が後ろから夏侯惇の顎を掴み口付ける。彼女の瞳は快楽にとろりと溶けていた。
体内の指を二本に増やし、肉芽を同時に弄ると夏侯惇の喘ぐ声は高くなる。
指をバラバラに動かし、くちゅくちゅくちゅとしつこいくらいに肉芽を触る。
強い快楽に夏侯惇がかぶりを振る。
いっそう曹操の愛撫が激しくなる。
中の指はさらに奥へ奥と進み、皮膚の硬い指は赤い肉芽をくりくりと弄ぶ。
夏侯惇の赤く上気した頬に、快楽から流れ出た涙が伝った。

「ふぅ…あぁ、ぁ、ぁん…ひっ、あんっ…んんっっ―!」

体をのけ反らせて夏侯惇が達した。
腕の中の体がびくびくと体と痙攣しているのを体越しに感じる。
曹操はしばらく夏侯惇の震えが止るまで、倒れないように強く抱き留めてやった。
やがて痙攣が治まると、曹操は腕を緩め、じたをぬっとり舐めあげて囁いた。

「…いれるぞ。棚に手をついて尻をつきだせ」

達したことで少し理性を取り戻した、夏侯惇はその言葉にあぁと熱いため息のような返事を返す。
言われたままに腰を後ろに突出すと、ドレスの裾をたくしあげられた。
ほんのりと色付いた白い臀部がむき出しになる。その双丘をひとしきり揉みあげるとぐっと手のひらで尻を掴んだ。
そしてこつこつと何度か肉の切先が菊の蕾にあてる。
その度にゾッと恐怖を覚えて夏侯惇は身を堅くした。
ひくひくと緊張する後孔。
それを素通りして淫らに蜜を垂らす花弁に肉棒が差し込まれた。
快楽に夏侯惇の眉根が寄り、安堵に息を吐いた。
曹操がからかうように彼女の菊の蕾の周辺を指でなぞった。


「フ、こちらにいれると思ったか?」

「…意地が悪いぞ」


睨みつけると曹操は余裕の笑みを浮かべて、腰を動かした。
曹繰は最初から激しく揺さぶる。激しく突かれて、棚が派手な音をたてる。
強い快楽に閉じることの出来ない夏侯惇の唇から甘い声が漏れる。

「はあっ、いい、…あぅ…はっ…あぁぁ…あ…」

ぬるぬると夏侯惇の会陰が彼女の愛液と曹操の先走りで濡れそぼる。
夏侯惇のおおぶりな乳房が曹操の動きにあわせて揺れる。
尻を掴む曹操の両の指が肌に食い込んだ。
勢い良く体内に侵入する陰茎は、いつもと違う角度でひだにあたる。
その感覚がたまらず、夏侯惇も腰を振れば再奥のしこりに先端があたって益々彼女はよがり狂う。


「…はっ……は……ん…」

「…っうん…ふぁ…ぁあ…ひぁ…」


髪止めが落ちて夏侯惇のすべらかな黒髪が零れ落ちた。
快楽にがくがくと膝が震え立っているのがつらくなる。
すると曹操が前に体を押して来た。夏侯惇の体は棚と曹操の体に挟まれることになる。
二つの熱い体が密着する。
耳の側で荒い曹操の息遣いが聞こえる。それを聞いているとらさらに欲情してくる。
棚を掴む手の上に曹操の手が重なる。腰は小刻みに動き、媚肉を掻き分けて最奥を攻め立てる。
こつりこつりと再奥のしこりに肉の棒があたる。

「ふぁぁ、あっ、いい、うあ、あぁぁ……」


甘い声を響かせて夏侯惇が達した。

熱い飛沫をうけて、ずるずると夏侯惇が床に崩れ落ちた。
くしゃりと2人の体液で汚れた書類が、夏侯惇の足の下で破れた。










夏侯惇はディスプレイを睨み付けながら不満気に声をあげた。

「…まったくどうして今のご時世にどうして機密データを紙で残しているんだ」

「パソコンの中の情報はいくらセキュリティを強化しても、ハッカーに狙われる可能性がたえない。重要機密であればあるぼど紙でしっかり保存しておく方が安全なのだ」

「その重要書類についている精液は誰のだと思う?少しは手伝ってくれないのか」

「無理だな。私は一度切れた集中力は戻せない。仕事の途中で誘ったお前が悪い」


そのとおりなのである。
天才気質とでも言うべきなのだろうか、曹操は短時間で恐るべき仕事量をこなすがぷつりと集中力が切れると、何一つ出来ない。
ペンを持つことも出来ない。パソコンを開くだけで嫌な顔をする。
普段は夏侯惇を含む側近があれやこれやと策を練って曹操をコントロールして仕事のスケジュールを遅滞させないようにしているが、今回は選択を誤ってしまったらしい。
おかげで夏侯惇はデータの修復作業。曹操は洗いたての髪でワインを楽しんでいる。数時間前とは逆の様子である。
夏侯惇は溜息をつきながらプリンターから書類を取ると、パソコンの電源を落とした。


「終わったぞ」

「そうか」


少し眠そうな曹操の声。
夏侯惇はムッとして、ソファーに座る彼の体を跨いだ。


「褒美をくれ」

「何を」


夏侯惇は艶やかに微笑む。


「ツァオは私のどこが一番好きなのか教えてくれ」


そう言って曹操の親指を甘く噛む。
紅い舌をちらちらと見せて腹の指をなそる。
ちゅっと親指を吸うと、薄く笑う曹操が夏侯惇の頬に手をそえた。


「一番か…」


2人の唇が重なるその寸前で彼は答えた。

その答えでやっと夏侯惇惇は今日初めて、満足を得ることが出来たのだった。





一番なんて無い。私が気に入っているのはお前のすべて―――




Fin


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貴方の口から言わせたい