抱きたい。ストレートな申し出が素直に嬉しかった。
男から自分に向かう感情。
例えそれが肉体的な欲でしかなかったとしても心は歓喜した。
それは元恋人の面影がある外見ではなく、「自分」を見ていると操に少しでも錯覚させてくれるのだったから――






「…あっ」


闇の中にうっすらと浮かびあがる青白い背中がぴくりと反応する。


「…それは…やめろと…っ!!」


操は体を捻って抗議した。
視線の先の夏侯惇は操の尻に顔を寄せて――ちろちろと肛門を舐めている。
その光景があまりに恥ずかしくて、操はシーツに顔を埋めた。


「…いつも思っていたが、今までこれはされたことがないのか?」


夏侯惇が面白がるような口調で問う。


「あっ…あるわけない」


元々情事が嫌いではなかった操は、これまで数多くの吸血鬼の男女と枕をともにしている。
だが礼儀を重んじる吸血鬼同士のセックスは、お互い気遣いながらの穏やかなものだ。
肛門を口唇愛撫するなんて、聞いただけで同族たちは卒倒するだろう。


「フッ…吸血鬼様は品のよろしいことで」

「お前たちが下品すぎるんだ!…こんな…ッ…こんな…!」」


肩を震わせて、操はプイと顔を背ける。


「…拗ねるな。操」


ふっと尻に熱い息がかかる。
そしてねっとりと舌が上がっていき、双丘の間を舐めあげる。
シーツをぎゅっと握って刺激に耐える操の体を、熱い舌が隅々まで侵略している。


「……ッ……あ……ふ……」


脇腹に、腕の内側、首筋から耳にかけて。
普段のおおらかさが嘘のように容赦なく執拗に舌が操の体を犯す。
もう夏侯惇に舐められていない場所などないと言う頃には、操はすっかり出来上がっていた。

ぷるぷると震える肉棒に、赤くひくつく秘所。
くたりと力が抜けてシーツに沈む白い肢体。荒い息遣いを整える間も無く貫かれる。


「あっ…くっ…はぁっ、ぁぁあ…ふ…」


腰を砕かれてしまいそうな激しい突き上げ。
激しい快楽に操は否応なしに喘がされる。
だがこれほど強い快楽の中にあっても、操の体に玉の汗が流れることはない。
色も頬がうっすらと色付く程度で、肌はほとんど白いまま。体が熱く火照ることもない。
吸血鬼の体質のせいなので仕方がないのだが、それが隻眼の狩人にはどうしても許せないらしい。
操の体に無理矢理にでも熱を与えようと、いつも操の背中を抱き締めつつ激しく責め立てる。
今もベットと操の体の間に腕を差し込み、ひしげよとばかりに強い力で抱き締めながら操を抱いている。


「はぁっ…ひぃ…ひぅぅ…あ、ぁぁ…」

「……はっ………は……はぁ……」


耳元で獣の息遣いが聞こえる。
密着する男の汗ばんだ肌。ドクンドクンと大きく脈打つ彼の心拍。全身で感じる情熱的な律動。
その上耳の中をぴちゃぴちゃと舐めれては、操の官能は煽られて仕方がなかった。
自分を抱く夏侯惇の髪の毛を悩ましげに掻き混ぜる。
体の奥を際限なく抉ってくる熱い陰茎。
操は感きわまって、足の爪先を突っ張るようにして中の陰茎を締め上げた。


「あっ、ふぁ、あぁぁぁんん!!!」

「……ぐっ」


お互いの性器からゴポリと白濁とした液が零れた。
下半身が蕩けきったような余韻に浸っていると、体を起こされた。


「…まだ終わりじゃないぞ」

「いっ…」


言うやいなや、対面座位の体位で律動が始まる。
嫌がって操の体が逃げようと夏侯惇の胸を押す。
それごと抱き締めるように、男の腕が操の背中を捉えた。


「俺から逃げられると思うな…」


ぞくりとするような色気と、常軌を逸した執着すら感じるような声音。
一際鋭く突上げられて、操はあやうく気を失いそうになる。
混濁する意識の中で、操はたくましい男の腕の中で、ただ快楽に酔いつくした。




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08.9.15