夏侯惇に「お前のアルバムを見て良いか?」と尋ねたのは、ひとえに彼の反応をみてみたかったからだ。

アルバムには彼と…彼の昔の恋人の姿もあるはずだ。
夏侯惇は嫌がるのか、取り上げるだろうか。
だが予想に反して彼の反応はそっけなく「好きにしろ」。
すぐに掃除機を再開した夏侯惇に肩透かしを食らったように感じながら、操はアルバムを開いた。

アルバムをめくってみれば、かつてこの男の隣にいたであろう亡き恋人が写った写真は一枚もないことに気付いた。
喪失の悲しみ故に目に見える思い出を残しているのにも堪えられなかったのだろうか。


「…お前の恋人の死体はみつからなかったそうだな」

「死んだよ。あいつは」


掃除の手を止めないまま答えた男の返事に、操は首を傾げた。
夏侯惇のかつての恋人だった男は、彼と同じく狩人を生業とし、吸血鬼と戦闘中に命を落としたらしい。
普通は恋人が死んだと認めるより、恋人は生きていると盲目的に信じた方がラクではないのだろうか?
人間とは本当に不可解だ。
それとも生きているという強い願望故に気が狂ったのか。
それほどまでに夏侯惇の想いは・・・
操は目を閉じた。

あぁ、本当に

嫉妬しそうになる。


操は素知らぬ顔ふりを装って、こっそり唇を噛んだ。



Fin


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08.9.28