若惇操*告白。
他愛もない日常のはずだった。
いつものように剣術の稽古の後に、他愛もない話をしていただけだったのに。
「お前、俺のこと好きなんだろ?」
突然の曹操の言葉に夏侯惇は声も出ない。
せっかく人がこの狂おしい想いをどう伝えようかとか、この想いは一生の秘め事だとか大まじめに考えていたのに、想い人のこの言い様。
ばつが悪いったらない。
「答えがないな…違うのか?」
いつでも自信満々の曹繰が少し不安そうな表情をしてこちらを見上げている。
嘘なんてつける訳がなかった。
「…違わない」
ぶっきらぼうに言い放つと、曹操から顔を背けた。
今の自分は顔から耳まで真っ赤になっているに違いなかった。
あぁなんて格好の悪い姿。そう思っても止められない。
本当は想いを告げるのならもっと格好良くいってやるつもりだった。
最良の状況で、
考え抜いた最高の口説き文句で。
一分の隙も無く格好良くいってやるつもりだったのに!
現実は汗をだらだらかいて、髪型も激しい稽古でボサボサ。
しかもちょっと前に剣術の練習試合で曹操に負けたばかりなのだ。
情けなくて思わず涙が出そうになる。
しかしそれも曹操の言葉で消し飛んでしまう。
「そうか。俺もお前が好きだぞ!」
沈んだ心が一転。
夏侯惇の心が羽を生やして幸せ一杯に空に舞った。
同時に自信満々にそう言い放つ、曹操の笑みがあまりに魅力的で、夏侯惇は再度彼に惚れた。
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