酔ってるんだろうなぁ。と玄関からすぐ近くの廊下で押し倒されて三成は思った。

金曜の真夜中。ベッドの中で気持ちよく寝入っていた三成は、突然来訪者を告げるチャイムで叩き起こされた。
こんな真夜中に、誰だ。
普通に考えれば悪戯の類いだ。放っておいた方が良い。
しかしチャイムが一回しか鳴らなかったのが返って気になって、三成はインターフォンを手に取った。

「――はい。どなたですか?」
「豊久です」
「ええっ!豊久殿!?」

声を聞くなりすぐにロックを解除した。どうぞ上がっていて下さいと言ってインターフォンを置くと、三成は首を傾げた。
おかしい。今日は予定があるので明日(すでに今日だが)土曜に会おうと言ったのは豊久自身である。
どうしたんだろう?不審に思いながらもエレベーターから人が降りてくる気配を感じて、三成は扉を開けた。

「こんばんは。とよひ…」

挨拶も言い終えないまま厚い胸に顔を押し付けられ、そのまま連れ込まれた。(と言っても、三成の家だが)
首筋にあたる熱い吐息と困惑する三成をにこにこと楽しむ姿に確信を持った。
豊久は酔っている。
パジャマをたくしあげられ、胸を撫で上げられるその仕草で、本当にここで致す気かと体が強張る。しかし三成は抵抗をしなかった。豊久との腕力の差は歴然としているし、何よりもこんな夜更けだ。例え玄関先で致しても最中の声を聞かれる可能性は少ない。少し、背中が痛いのが辛いが。
このまま流れに身を任せることに決めた三成は、豊久の髪の毛を愛おし気に掻き混ぜた。
すると豊久が嬉しそうににっこり笑う。仏頂面の豊久を見慣れている三成からすれば若干の恐怖を覚えるが、同時に可愛いと思ってしまうのは偏に惚れた弱みである。
荒々しくスボンと下着を脱がされる。足の付け根に顔を埋められて、三成は悩ましげに声を上げる。
そしてゆらゆらと妖しげに動く豊久の頭を見つめた。
恐らく明日の朝一番に見るのは顔面蒼白な彼の顔だ。
そうほとんど確信しているのは、実は泥酔した豊久に襲われるのはこれが初めてではないからだ。
前回もその前も、彼は次の朝には自分のしでかしたことを大いに恥じて土下座した。
彼の必死に謝る姿は、大人びているようでやはり三成より年下という幼さが垣間見えた。それにいつも豊久から怒られがちな三成にとって、彼からまっすぐに謝られることは新鮮であった。

三成は彼のその姿を見ると、いつも、怒りよりも愛おしさを覚えた。
彼の恥ずかしげに謝るその姿が堪らなく好きだった。
そういう豊久を愛していた。

こういう状態の豊久に襲われても抵抗しない理由の一番は実はそれだったりする。また明日、恥ずかしげに頬を染めて謝る彼が見られる。
自分って結構意地が悪いよなぁ、と三成は頭の片隅で思いながら豊久の髪を引っ張る。
そして微笑みながら口づけを求めた。


Fin


>>BACK


初出09.5.24