藤鬼シリーズ簡単設定。
※直政は代々特殊能力持ちの家系
※豊久は定期的に直政の血液を飲まないと死んじゃう
※訳あって二人とも諸国放浪中。結構らぶらぶー
詳しくはオフ本でどうぞ!(悪質!悪質販促!)
まさか三行で要約出来るとは…^q^




下から小説です









二人は立ち寄った茶屋で茶を啜り、団子を頬張っていた。
凍えるような北風が茶屋の暖簾を容赦なくはためかせる。
直政は鼻を赤くしながら、いつもより口重になっている相棒に話かけた。

「豊久、寒いんじゃないのか?」
「べつに」

寒くない、と言いかけたところで豊久は大きなくしゃみをかます。
そのまま仏頂面でずびびと鼻をすすった。
やっぱりなぁと直政は思う。直政の出身は近江でそれなりに寒さには慣れているが、豊久は温暖な薩摩の生まれでこの寒さは堪えるはずだ。
直政は提案した。


「温泉行こう」
「はっ?」
「この近くに知る人ぞ知る秘湯があるんだって」
「…なんでそんなもの知ってる?」
「そりゃあ殿が文で教えてくれたから」
「…………全然子離れ出来てないんじゃないのか…?お前の殿は……」


話が違うじゃないかと豊久は呟くが、直政は気にせずごそごそから懐から地図を取り出して豊久にみせる。
豊久は眉を寄せた。


「…ふん、獣道だろうがこれは」
「獣だろうが、何だろうが関係ないだろ。行くのは俺とお前なんだから」
「誰が行くか」


そんな面倒なという言葉半ばで、びゅうと一際冷たい風が吹いた。
ぶるりと体を震わせる。
豊久は再びずびっと鼻を啜って「……行く」と小さな声で承諾した。




***



道なき道を進み、時には野生の動物を倒し、時には木に登って方向を確認し、二人は無事に幻の秘湯にたどり着いた。

先客のお猿様(と表現するのがふさわしい程彼らは堂々としている)にぺこりと頭を下げて、豊久と直政も湯につかった。

夜半すぎ。
空は真っ暗でぼうぼうと白い湯気があがる。
近くで先客が毛づくろいしていたり「うきっ」「うきき」という鳴き声が聞こえて来るのは果たして風情があるんだか、ないんだかかわからないが、芯から体を暖め疲れをほぐしてくれるような湯である。険しい道を登ってきた甲斐はあった。

はぁと心地よさに息を吐き、上を向いて月を眺めていると騒がしい声が響いた。


「せーの!……あぁー!また負けたぁぁ!」
「うききー!」


直政は猿と真剣勝負(じゃんけん)をしていた。


「くそぅ!猿のくせに生意気だぞ」


直政が負け惜しみで吠えると、猿が「うきぃ!」と高い声をあげて直政にパンチした。
ばしゃんと直政の体が湯の中に沈む。
豊久は心の底から思った。


「何やってるんだか…」


湯の中から起き上がった直政が、何ごとか猿に耳打ちする。
猿はにやりと笑った(ように豊久には見えた)

一人と一匹は張り詰めた空気の中構えた。

「いざ勝負!じゃーんけん……」







「……………それで、どうしてこうなるんだ?」

豊久はしかめっ面で額を押さえていた。
目の前には今にも「頂きます」とでも言いそうな直政の顔がある。
先程まで一緒にくつろいでいた猿の姿は一匹もなくなっていた。


「男同士の勝負の結果だ!」
「男と雄の勝負だろ。だいたい私は何も…ぅん…」
「そんなに照れるな!俺が暖めてやるから」


反論の言葉は唇ごと奪われた。
熱い唇が離れては何度も吸い付く。
呼吸が苦しくてわずかに口を開けば、待っていたとばかりに舌が進入する。
直政は慣れた調子で豊久の口内を翻弄した。
くちゅ、くちゅと濡れた音をたてて舌を絡める。
湿った粘膜同士の接触は思いのほか強い快感を得てしまう。
ただの接吻なのにという理性を置き去りにして、湯の暖かさと悦に意識が混濁する。


「…湯を汚す訳にはいけないから、今回は<食事>はなしでな……?」


するりと後ろに回り込んだ直政が、艶っぽい声をだして耳元で囁く。
ぼんやりとした意識でそれを聞きいた豊久は微かに首肯した。
勝手知りたる豊久の体を直政の掌が良いように弄くりまわす。
肌を掌が這いずるまわる感触に自然と腰に熱が集まる。
胸の尖りを弱く引っ掛かれて、んっ、と小さく息をつめた。

体を重ねることと血を摂取することは深く結びついていた。
血臭がしないまぐわいは、これが始めてな気がする。


――乱されるのは、夢中になるのはまぐわう時に漂い流れる甘い蜜のせいだとおもっていた。

だが、赤い甘露がなくても充分、……



直政の指が豊久の雄を湯の中で軽く弾いた。
それはすでに固く張り詰めており、びくりと豊久の肩が揺れる。


「このままだと湯を汚すか、…」


一応公共の場だしな。ざばり音を立てて、直政は湯からあがった。
怪訝に思う暇なくこっちに来いと手を振られる。

湯から出たら寒いだろうにと思いながら、仕方なく立ち上がる。

だが一歩二歩くと軽い目眩を覚えた。
ゆっくり入浴していた後、戯れたので少し湯あたりしてしまったのだろう。

たちまち立っているのが億劫になってぺたりと腰を落とした。火照った体にひんやりとした石肌が心地好い。

豊久は誘われるままごろりとそのまま横になった。
素肌でなんとはしたない姿であろうか。
まぁいいか、どうせ相手は直政だ。


「良い眺めだ」


直政が喜色を浮かべてその肢体を舐めるように眺める。

上気した褐色の肌、その肌をすべる雫。
気だるげに四肢を放り出しながら、天を突くように猛った雄。

湯場近くの石肌に転がる肢体は、白い湯気と相まってとても艶っぽい。

直政がその身に覆いかぶさろうとしするが、阻むように肩を押された。


「待て、背が痛い」
「それは残念」


あっさりと覆いかぶさるのをやめ、逆に豊久の腕を引っ張る。
座ったまま豊久は直政に抱き留められた。肩に顎を乗せると、宥めるように背を摩られる。
何度も何度も撫でられていくうちに、目眩がおさまる。


「もう大丈夫か?」
「あぁ」


頷けは直政がぺろりと己の指を舐めた。
湯で温まった秘所は難無く唾液に塗れた指を飲み込んだ。すぐに数を増やし中を弄る指に、段々と豊久の息が乱れていく。
いつもより早く押し付けられた熱い欲望も、溶けた蕾は従順に飲み込んだ。
熱い吐息が混じり合う。


「…温泉効果か?豊久の中いつもより熱くてとろとろ」
「うるさい!」
「っ…照れるな、食いちぎられる」


直政が悲鳴とも文句ともとれる声をあげながら、ゆっくりと突き上げ始める。
豊久も相手に合わせて腰を揺らし始める。いまさら恥じらいを覚えるような仲でも無い。
動きと自重により深く繋がる体勢に豊久も快楽にあながえない。


「はっ…豊久の中が気持ち良すぎて、…俺の方が喘いでしまいそう、だ…」


豊久は眉を寄せながら薄目を開け、直政の胸板を乱暴に撫でた。見つけた胸の尖りを、愛撫し無造作に摘む。


「ふっ…とよひさ…っ」


直政のより艶っぽい声音に、心身が燃え上がる。

名を呼ばれる事で己が抱かれていることを知り、その声で己を抱いている男が誰なのか再認する。


「ひ、ぁっ、くっ…ん、なおまさ…」


唇が重なり、ぬるしとした咥内をざらざらとした舌になぞられ犯される。


口吸いが苦しく、熱く、何よりも心地好い。

直政が瞳が己を映す。直政の吐息が肌を擽る。直政の欲望が身の内にある。

…特別な血がなくとも。

はちきれんばかりに熱が高まる。意識がとろとろと緩く甘く溶けていく。


かつて交わった誰とも比べ物にならない。

深く侵食され、罪深いほど――悦びを得てしまう。



「はっ、ぁっ、ぅ…ふ」


限界が近づいている。
だがそれを豊久は相手に伝えなかった。言わなくても、相手にはもうきっと悟られてしまっている。
奥へ奥へと導こうとする肉の間を、強く肉の切っ先が突いた。


「あっ、ふ…うぅ!!」


豊久が背を逸らし達した。太い幹から白濁の液が飛び散る。
遅れて獣のような呻きを漏らしながら、直政も精を放った。引き寄せられた腰に強く指が食い込む。


「ぁ、ぁぁ、…」


灼熱のほとばしりを腹の中で放たれて、豊久の口から細い声が漏れた。
体の奥底まで征服されて奪われる感覚。

それは確かに甘い陶酔だった。







「………なんで湯に入ってたのに、こんなに疲れなければならないんだ?」


げっそりとして湯に浸かる豊久を、まぁまぁと直政が宥める。
彼は豊久の冷えた肩を温めようと、せっせっと湯をかけてくる。
豊久はぎろりと後ろの男を睨む。温泉に来てまさかあんな所まで清められるとは。中だしされた後の処理を思って、毒つく。
そりゃああの体位で外だしは難しいというのはわかるし、直接中に出されたことを怒っている訳でもなく、ただ恥ずかしかっただけといえばそれだけなのだが…

と、そこであることを思い出して豊久は険しい顔をやめた。代わりに意地の悪そうな笑みを浮かべる。


「その尻、しばらく痕が残るかもな」


直政の尻にはくっきりと岩の表面模様が浮かんでいた。二人分の体重の負荷がかかっていたせいで内出血している可能性もある。
えぇー。と直政がそれは困ると心底情けない声をあげる。

――今度自分が男役でこいつを抱く時、痕が残っていたらとっくり舐めてやろう。
こっそりと豊久は決めた。

後ろを向いて情けない顔の中央についている鼻を思いっきりつまめば、むぐっと間の抜けた音が漏れた。豊久は小さく吹き出した。













一ヶ月後またもや秘湯に人間の来客があった。

家康とその妻、そして本多忠勝を筆頭とする小数精鋭徳川家臣団である。

直政から返ってきた文を読んだ家康も、気分転換湯治に出かけることにしたのである。ちなみに直政の文に書かれていたのは「ばっちりでした!殿☆」であった。

木々を分け入った先に野犬が出れば家康を庇うようにお勝の方が立ち、お勝の前に震えながら吉政進み出て、吉政の前に忠勝が立つ。蛇が出てもお勝が前に立ちその前に吉政さらにその前に忠勝が。狸がでても狐がでてもそのフォーメンションは変わらない。
そのうち同行している家臣たちはこっそりおもった。

(家康様と忠勝殿の間の二人いらないんじゃ…)

「いらぬな」と家臣の心を読んだ家康が答えた。ぷかりと暢気にキセルの煙りが漂った。



徳川最強のボディガードの本多忠勝に守られた一団は無事に秘湯に到着した。
昼のうちに到着したために常連のお猿さまもいない。
主の素肌を見るなど恐れ多いと忠勝を始めとする家臣たちは少し離れた所で待機する。

唯一お勝だけがはりきったようにたすきがけで裾を上げて家康に近づく。


「殿ぉー!お背中お流しします〜!」


くつろいでいた家康であったが、突然近づいてきたお勝にもまるで動じない。


「背中といわず、お勝も一緒に入れば良かろう」


家康に他意はなかった。どうせなら家臣達も一緒に入れば良い、ぐらいしか思っていなかった。

しかし中二男子並に過敏なセンサーを持つお勝にとっては、武田の鉄砲隊より威力のある発言であった。
顔を真っ赤にし、ふらりとよろける。


「と、殿、こんな所で、なんて破廉恥な…!あぁでもそんな大胆な所が…勝は…!勝は…!」


お慕い申し上げてっ…!


感極まったような声が途切れた。
代わりに、ざばんと盛大に飛沫があがる。
ぷかぷかと水死体のようなものが浮かんだ。うつぶせになった鼻からはどくどくと赤い血液が流れて湯を侵していく。


ふー…と涼しい溜息をついて、家康は空を見上げた。
頭上では暢気に鳶が飛んでいた。



Fin

10.4.30

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秘湯のスメ