1.



それは子供が昼寝についたように無防備で
こんなに幸せそうに眠る彼を見たことがなかった。


どれだけ肌を寄せても、彼の肌に熱が移ることはなく冷たいままであることが残念でならない。
諦めて、離れる。濡らしたタオルで体を拭って、汚れたぺニスを拭く。
ズボンをつっかけ、テーブルにあった彼の鞄を探った。
見つけた携帯を開けば、待ち受けに三人の男の子が写っている。
元親は重い息を吐いた。その携帯で電話かけるのは躊躇われて、自分の携帯を取る。
生まれて初めてかける番号。
コールはごく短かった。

「…人を殺しました」

問われるまま住所を答える。

「名前は、長曾我部元親」

携帯を置いてベットで眠る彼を眺める。
1Kの安普請の中で彼だけが、巧緻に作られた彫刻品のようだ。
その美しい躯を丁寧に拭いていく。頬から首へ、首から胸へ、あばらから臍へ、黒々とした茂みを通って、力無く垂れ下がったぺニスを優しくタオルで清める。
早暁の日差しを受けて、彼の躯は膜を張ったように白く光っている。
だから、喉仏にある紫斑は何かの間違いにも思えた。

ばさり。床に丸まっていた浴衣を躯の上にかけてやる。
浴衣を整え、頬にかかる髪を払う。
元より整っていた容貌が、色を無くし息を無くし、いよいよ人形めいて美しい。
その頬を無骨な指で撫でる。何度も。
記憶に刻みこみように。

「……もとなり」

身を屈め合わせた唇は、カサついていて氷のように冷たい。

サイレンは、すぐ近くまで迫っていた。