慣れた体だと思った。
どこに触れても良い声で啼く。
「あ…ふぁ…ふっぅ…あぁ…」
直政は女のように高い艶やかな声をあげている。本人に声を隠す気はないらしく、素直に感じるまま喘いでいる。
目上の者を組み敷くというのは豊久にとってかなり抵抗のあることであった。だが直政と過ごすうちにこの男におもねるなどというものは不要かと考えが変わった。そして何より――無邪気に誘ってきた直政の褥に散った黒髪の美しさに、豊久の理性は揺さぶられてしまった。
もはや先日の意趣返しという目的を遠いところにおき、煽られるまま豊久は直政の体を貪っていた。
肌を撫で、胸の尖りを啄ばみ、腹の筋を舌で辿れば直政の息が弾む。
決して細い体ではなく、武将として申し分ない鍛え抜かれた筋肉を纏っている。だが非常に均整のとれた美しい体であった。
白い肌は仄かに朱を孕み、肌に無数に走る傷すらどこか倒錯的な色香を放っている。いつもは煩わしいほど真っ直ぐな瞳も、今はとろりと快楽に溶けていた。
ぞくりとしたものが豊久の背筋を走る。
これがあの井伊直政かと思う。
これがあの天下人に愛されている体かと思う。
腹の下にゆっくりと熱がたまっていくのがわかった。
直政の膝を割り、秘部を露にしたときにふと彼の太腿に巻かれている白い包帯が目に入った。同じものは彼の右腕にも巻かれている。
太腿の傷は豊久がつけた傷だ。
痛むか?と尋ねると直政は首を横に振り、早くしろと掠れた声で続きを催促してきた。
豊久は用意していた軟膏を指につけ、直政の中に挿入した。
「ひぁっ、うっ…」
軟膏が冷たかったのだろう、直政の肩が大げさなほど跳ねた。豊久は宥めるように彼の肌を愛撫しながら、指を抜き差しする。
「…あ…あぁ…あ…ぁふ…ん…」
直政が眉根を寄せて喘いでいる。豊久も彼の中に指を三本入れて激しく抜き差しする頃には息があがっていた。
頃合か、と豊久は自らの魔羅を取り出そうとする。するとぐいと肩を押された。
「…待て、島津」
豊久は鼻白んだ。
「ふん、ここまで来て待てか?」
「そういう意味じゃない。俺もここまで来てそれを言う程鬼じゃないぞ!」
何を言っている。井伊の赤鬼と呼ばれているくせにと睨むと、直政は豊久の予想を超える行動に出た。
彼は指をぺろりと舐めて、自らの後孔につぷりと指を挿入した。
「島津のは大きいからな…もう少し…」
んっ、と息を詰めながら直政は手馴れた様子で、自らの後ろをほぐしていく。
そのあけすけな行動に豊久は呆気にとられたが、同時に直政のなまめかしい姿態に目を奪われた。
片膝をたて秘部をさらし、自らの孔に指を出し入れする。直政の孔は紅く色づき、軟膏と唾液でいやらしげにてらてらと光っている。
自慰といえなくもないその光景に、豊久は息苦しくなるほどの情欲がせりあがってくるのを感じた。
直政が指を抜いて「もう良いか」と言ったのを合図に、彼の肩を褥に縫い付けた。
「ふん…もう挿れるぞ」
返事を待つ前に、豊久は腰を押し進めた。
「…あぁ…あ、ぁぁ…!」
直政が一際高い声で啼く。豊久も呻き声をあげた。
中は熱く柔らかく、女の膣のごとくぬめっていた。熱い襞は魔羅に吸い付くように心地よくしめつけてくる。堪らずに腰を動かせば、ぞくぞくとする快楽が豊久を支配する。
ほとんど腰をぶつけるような激しい律動に、直政は背をしならせて悶えた。
「あっ、ひ…あ…っあぁぁ…んっ…ぁあ…」
直政も豊久に合わせて腰を揺らし始める。
豊久は男の肩を抱きこむようにし、夢中で、抱いた。
→
>>BACK
|