※最後はハッピーエンド予定。(つまり序盤は結構シリアス)
※途中驚きのあまり目玉が飛び出る…かもしれないキャスティング。そして設定。
肝の太さに自信がある方だけお進み下さい。
※基本的に豊久が情けないです。ヘタレ久です。
※一応ここでは完全に豊久×直政。
以上一つでもまずいと思った方は記憶を抹消してお戻りください。
大丈夫な方は進みくださいませ!
↓
3年前の3月19日。
それが島津豊久の初体験の日にちである。
豊久は卒業証書を片手に幼馴染みを探していた。
昼を一緒に食べに行く約束なのだが姿が見えない。携帯も繋がらず、豊久は苛苛した。
校舎をくまなく歩いたがすべて空振りに終わり、さては約束を忘れて先に帰ったなと豊久は疑い始める。校内は先までの喧騒が薄れ、閑散とし始めている。
もう帰ってしまおうと思ったが一応念のために、体育館まで足を延ばした。
体育館は思った通りがらんとしてたが、微かに人の気配を感じた。
「お前なんでこんな所に…」
体育倉庫に探していた人物がいた。
彼は積み重ねられたマットの上にだらしなく寝転がっている。
声を掛けられてやっと豊久に気付いたようだ。
「あっ…豊久」
「携帯。なんで出なかった?」
「えっ?あ、本当だな。着信が入っている」
豊久は呆れると共に訝しむ。
随分とぼんやりしているようだが、彼は元々周りが煩わしいと思うほど溌剌としているのが常なのでこんな状態は珍しい。寝起きなのだろうか。
「豊久。少しここで喋っていかないか?」
「あぁ」
答えると何故か直政が立ち上がって倉庫の扉を閉めだす。
その上、扉の前にバスケットボールが入った籠を移動させた。
「……そんなに内緒の話なのか?」
「まぁ、そんな感じ」
途端に豊久は緊張し出すのを感じた。
実は豊久はこの幼馴染みに特別な感情を抱いていた。
目立ちたがり屋で、感情のまま行動する、自分と真逆の彼にどうしてこんな感情を抱くのか甚だ疑問であったが――それでも好きだった。
しかし豊久にもこれが道ならぬ恋であることがわかっている。男らしく想いを告げて玉砕するか、はたまた想いを胸に秘めて黙し続けるか若い豊久にはまだ判断がつきかねていた。
緊張を紛らわすために、豊久もマットの上に寝そべる。戻って来た直政もぽすっと同じように寝そべった。
「中学も終わりだなぁ」
「そうだな」
「俺たち高校別だし、これから会えなくなるかも」
「15分もかからない家の距離だぞ。学校が違っても会わない方がおかしい」
そうだ。会わない方がおかしいと豊久は自分に言い聞かせるように再度胸の中で呟く。
「……豊久」
思ったより近くから声が聞こえて豊久は驚いたが、次の彼の発言には仰天した。
「卒業ついでに初体験も済ませてみない?」
「…………はっ?」
「あれ?もしかして豊久、経験ある?」
「え、いや…えっ…な、何を言っている?」
豊久は動揺のあまり間抜けな声を出してしまう。
冗談だ。こいつは冗談を言っているのだ。無様な醜態を晒せばからかわれて笑われる。
やっとそう判断して、豊久は必死に冷静になろうとした。
だが直政は豊久の頭の側に手を突いてこちらを見下ろして言った。
「俺が相手じゃ嫌か…?」
直政の粗野な性格に似合わぬ端正な顔が、ゆっくりと近付いて来る。
あっ、と思った瞬間、唇が重なった。
豊久は目を見開き、直政は伏し目がちに、角度を変えてまた口付けて来る。
――し…
心臓が止ってしまいそうだと豊久は思う。
ほのかに暖かな温度が唇に触れるうちに、ふつふつと熱が上がってくる。
恐る恐る直政の頭に触れる。柔らかな髪と地肌を感じると、劣情が爆せた。
直政の肩をマットに押さえ付ける。直政の体を自分の下に組み敷いている。夢にまで見たその光景に豊久は目眩がしそうだった。
しかし彼の黒い詰め襟のホックを一つ外した時に、微かに理性を取り戻した。
致す前に彼に言わなければならない事がある。
「…直政。俺はお前が…っ」
言い終わる前に、直政の口が豊久の口を塞いだ。
ぬるりとしたものが豊久の舌に触れた。
――直政の舌だ。
認識すると豊久は動転した。舌。直政の舌が自分の舌と触れている。衝撃に色々なものが吹き飛んでしまった気がした。
くちゅくちゅと湿った音が響く。
こんなことをして良いのだろうか。自分達はまだ中学を卒業したばかりなのに。
そう思いながらも絡んで来た舌の熱さに、豊久の理性はまた霞んだ。
夢中で直政の学ランを脱がせ、ワイシャツの釦に手をかけた。
未発達な、瑞々しい肢体だった。白い肌に若さが匂いたっている。
豊久は誘われるようにその胸に触れた。柔らかい胸の飾りをやわやわと弄れば、可愛らしくぴんとたちあがった。
おずおずと豊久はその飾りに口付けた。
――男の乳首って舐められて気持ち良くなるのだろうか?
心配になって尋ねる。
「…気持ち良いか?」
「うん。結構イイ……」
目を細めて肯定されて豊久はほっとした。
そのまま手を進め、舌を進め、――豊久はその体を貪った。
初めて見る体では勿論はない。しかし直政への欲望を自覚した時から、意識的に着替えの時なども彼の方を直視しないようにしていた。故に目の前の肢体は豊久にとってたまらなく魅力的で蠱惑的なものだったのだ。
肌を愛撫しながら豊久はその固い弾力を楽しむ。
女性との性交渉の経験もないが、それでもこの肌は女の柔肌とは違うだろう。同じ道場に通い、鍛えた男の肌だ。直政の肌だ。そう認識するとますます情欲が募った。
ふとこちらを見る直政の視線を感じた。
彼は顔を横に背けることなく、目元を朱に染めながら真直ぐに豊久を見ていた。
突如不安がよぎった。彼の目に自分は今どう映っているのだろう。獣のようだ。浅ましい男と映っているのだろうか。
豊久はその不安をふり払うように、やや乱暴に彼のズボンと下着を脱がせた。直政は抵抗する素振りもなく腰を浮かせて手伝う。
脚の間にある性器は驚くほど形が良かった。
張り詰めて先走りの涙を流すそれを見て、豊久に一つの欲求が頭を擡げた。
――ビデオでは女性が男性にやっていたことだけど…
と従兄弟に無理矢理見させられたアダルトビデオを思い出しながら、彼の性器を口に含んだ。
「…あっ!」
直政の体が大きく震えた。今まで愛撫に微かな反応しか示さなかった直政の予想外に大きな反応に、豊久は慌てて口を放した。
「す、すまない…」
「…大丈夫。続けてくれ。ちょっと驚いただけだから」
豊久は恥ずかしくなった。それはつまり『お堅い豊久がフェラチオなんてするとは思わなかった』という意味だろう。
自分は凄く大胆なことをしでかしたのだと後悔が襲ったが、ここまできたら破れかぶれ。続きを行うことにした。
今度は慎重に舌でゆっくりと直政の性器を愛撫した。
「…うっ…あぁ……ひっあぁ…!」
それでも若い直政には充分すぎるほどの快楽なようで、甘い悲鳴をあげた。
その甘声をもっと聞きたくて、一心に性器を愛撫する。
ぬらりと豊久の唾液まみれになった性器をもう一度頬張った。
自身を豊久の口に含まれた直政は「熱い」と呻いた。
「…あ…あぁぁ…っ!」
まもなく直政は果てた。
白い肌を紅潮させ、胸を上下させて荒く息をつく直政の姿態は艶かしい。
一方豊久は硬直した。口内には直政が放った精液がある。独特の青臭い苦味も直政のものだと思えば苦ではない。
だが
――俺はこの後どうすれば…
豊久は迷った。相手の目の前で精液を吐き出すのは、なんだか失礼なような気がする。
あの女性はどうしてただろうか?
豊久は再度一度だけ見たアダルトビデオを必死に思い出す。
男をいかせた後、彼女は――
飲んでたよな?うん、飲んでた。
そうか。この場合精液は飲むものなのか。納得した豊久はあっさりとそれを嚥下した。
どろどろとして喉越しは不快だが、まぁ良いか。直政のだし、ぐらいに思った。
豊久の行動に対して仰天したのは直政である。彼は目を見開いた。
「…飲んだのか?」
「飲んだ。…いけなかったか?」
「…別にいけなくはないけど」
…すごく、恥ずかしい。と小声で呟いてそっぽを向いた直政が、豊久には可愛らしく見え、愛しかった。
直政の双丘を探り、秘所に触れた。当然のごとくそこは女のように濡れているわけではない。せいぜい性器を伝った豊久の唾液と直政の先走りが微かに湿らせている程度だった。
さっきの精液、全部飲むべきではなかったのかも。豊久は己の失態を悟ったが、嘆いても始まらない。豊久は自分の指を舐めて、直政の秘所に挿入した。実はこの行動も一度限りしか見ていない件のアダルトビデオの倣いである。豊久の性知識はこの他に義務教育内の保健体育くらいのもので、同い年の男子と比べて格段に知識が乏しかった。
「っぁ…はっ……ぁう……」
…苦しそうだな。
指を2本挿入しただけでも苦しそうに息を吐く直政を見て豊久は胸が痛む。
――こんな所に俺のが入るんだろうか?
到底入らない気がする。内部を弄りながら考えていると、突然直政の両足が豊久の肩の上に乗った。
「…もう良いよ。いれて」
「けど」
「良いって。早く」
豊久は逡巡したが、赤く染まった直政の秘所に唾を飲んだ。両足を上に上げているせいで、その場所が良く見えるのだ。
後悔しても知らないからな。小さく警告して豊久は自身の熱くたぎったものを取り出す。彼の秘所にあてがい挿入しようとした。
だが、豊久はあることに気づいた。どうしようと迷った彼は言い難そうに直政に切り出した。
「……直政」
「ん?」
「その、俺は持ってないんだが…………コンドーム」
彼は一瞬呆けた顔をしたが、すぐにぱちぱちと瞬きをした。
「…いらないんじゃないのか?…たぶん。俺、妊娠出来ないし」
「そ、それもそうだな…」
直政も確証は無いのか小首を傾げながらの返答だったが、豊久は顔を赤らめて俯いた。学校の授業でセックス=避妊具使用と摺り込まれたのでうっかり口にだしてしまった。とてつもなく恥ずかしい。
そしてコンドームを使用しないということは、つまりこのまま直接彼の中に…と思考が至った豊久は益々赤面して内心あわあわとした。
これでは埒があかぬと悟った豊久は、きりっと表情を引き締めて再度挿入を試みた。
しかし。
…入らない。
固さが問題ではない。入口が狭すぎるのだ。まだ少年の、しかも男を受け入れるのは初めてだろう秘所は少し指でほぐしたぐらいでは緩めることは出来なかったのだ。
どうしようと戸惑っていると、直政も気付いたようで手伝うように腰を擦りよせてくる。そのおかげで先端が肉の間に入ったが、豊久はなんだか情けなくなってしまった。もう彼の手を借りたくないと、意地になってほとんど無理矢理に陰茎を押し込んだ。
――まずい。
物凄く気持ちいい…
熱い肉が陰茎をあますことなくぎゅうぎゅうと締め付けて来る。
豊久が熱い吐息を漏らす一方、申し訳ないことに彼は苦痛に顔を歪めていた。
「っぁ…いた、い…とよひさぁ……」
豊久の頬がかっと朱に染まった。
痛いという言葉が生々しくて、そのか細い声音が艶っぽくて、羞恥と劣情を覚えてしまう。
いたい、いたいとさらに訴える直政の口を慌てて手で塞ぐ。
「わっ、わかった。抜くから、もう何も言うな……」
それ以上言われるとこちらの熱が上がって、行為を止めることが出来なくなる。
しかし離れようとする豊久とは逆に、直政が駄目!と叫んでしがみついてくる。
「やめるな。続けろ!」
「続けろってお前…。痛いんだろうが」
「痛くない。痛くないから!」
直政が目を潤ませながら、続きを促してくる。
どう考えても彼の言葉は嘘なのだが、彼の様子があまりに必死なので豊久もやめるにやめられなくなる。
豊久は一つ息を吐いて言った。
「…動くぞ」
「…ぅん…っ!…ぁぅ…」
体を動かすと、肌が泡立つような快楽が腰から上へ駆けあがってくる。
だが自分だけで快楽を得ているようで豊久は焦った。
ふと痛みでうなだれている彼の性器が目に入る。
動きながらこれを扱けば…
「……っ…ぁ……あぁ!」
恐る恐る実行すれば、直政の声に快楽がまじり、陰茎が固くなっていく。
豊久はほっとしながら、手を動かした。根元を探り筋をなぞる。先端を爪でつつけば、彼の腰がびくりと反応した。
「あっ、ぁぁ…ひぅ…あっ…」
直政の眦から涙が零れ落ちる。
それを舐めとりたいと思ったが体勢的に無理であった。代わりに腰を少し乱暴に揺すり、陰茎を強く愛撫した。
「あっ…そこ…イイ…!」
「えっ……ど、どっちだ?」
秘所で接合している場所なのかそれとも指で弄っている陰茎なのか、はっきり口にだすことが出来ずに豊久は口ごもる。
一方直政は迷うことなく言い放った。
「…中!!…やっ…ぁ…」
「…此所か?」
「あっ、うん…そこイイ…!ひぁっ…ん…」
ぐしゅと勢いよく直政の先走りが吹き出した。
豊久は勢いをつけて、直政の良い所を突いた。
「あっ…あぁ……もぅ…!ふぅっ…とよひさぁ…」
びくびくと抱え上げた直政の太股が震えた。
自然と秘所も強くしまって、豊久の顎から汗が滴った。
「っ…俺も…!」
「…あ、ぁっ…ふっぁぁぁ!」
「……くぅっ!」
先に直政が果て、それをギリキリの所で見届けて豊久も達した。
二人分の荒い息が倉庫に響く。
グラウンドを全力失踪した後のような、疾走感と疲労を覚えていた。頭がクラクラする。
…ど、どうしてこんな事になったんだけ?
状況に混乱しつつ、まだ彼と繋がったままであることに気付き慌てて体を離した。
しかし離した途端彼の孔から自分の精液が流れ出してさらに慌てる。
マットが汚れる!
急いで鞄からティッシュを取り出して、豊久は後始末を開始した。
あらかた片付け終わると豊久は緊張した。
――俺たちはこれからどうなるんだろう?どうするんだろう?
不安に思いながら、豊久はこっそり期待した。なんとも思っていない相手に体を許す人間なんていなはずだ。もしかしたら、もしかしたら…
そう考えると、おかしなことに体を繋げた時よりも胸が高鳴った。「直政。お前…」豊久が意を決して直政の真意を確かめようとした時だ、彼は屈託のない笑顔を浮かべて言った。
「ありがとう。豊久。良い練習になった」
「えっ?」
豊久は咄嗟に何を言われたのか分からなかった。
練習…?
困惑する豊久に直政は無邪気にとどめをさした。
「俺、ずっと前から好きな人がいるんだ。その人が高校に上がったらセックスしてくれるって言ってくれててさ。でも本番で失敗したら嫌だから豊久に付き合ってもらったんだ。ありがとう」
豊久は幼馴染みの言葉が信じられず一瞬呆然とした。
だが言葉を理解すると激しい怒りが爆発した。
「俺は単なる練習台かっ!?」
豊久の剣幕に直政はまったくうろたえず、あっけらかんと言った。
「そうだけどさ。けど豊久にとっても悪いことじゃなかっただろう?高校入る前に初陣なんてなかなかのスコアじゃん」
「ふざけるな!!」
豊久は一切の容赦なく直政の頬を殴る。
無造作に脱ぎ捨てていた学ランと鞄をひっ掴んで、ドアの前の籠を思い切り蹴飛ばして外に出た。
――なぜ!どうして!?
失望が深すぎて、ショックが大きすぎて、胸が痛すぎて、ろくに外の景色を知覚しないまま豊久は家に帰った。自室に飛び込んだ豊久は、部屋の鍵を閉めてベッドの中に潜った。悔しい、辛い、苦しい、どうして!!
あんな奴だったのか?あんな奴とずっと一緒に過ごして来たのか?自分が知っていると思っていた彼はどこまでが本当で、どこからからが間違えだ?
わからない。
いや、わかる必要なんてないのだ。
あんな奴なんて知るものか!
最低だ。人の心を弄んで踏み付けた最低最悪の人間だったのだ。
だが直政のことを罵倒すればするほど豊久の目から涙が零れた。
豊久は嗚咽を自らの拳を噛むことで耐えた。直政を殴った拳だ。
拳が痛いのは自分が今噛んでいるからだ。決して奴を殴ったからじゃない。断じて。
「……うぅ…!!」
布団の中で嗚咽をかみ殺す自分が酷く惨めで、豊久の瞳からまた涙があふれ出た。
3年前の3月19日。
それは豊久の初恋が終わった日でもあった――。
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09.7.20
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